パティシエ SHOKO HIRASEの視点【第2回】おいしい琥珀糖は、時間がつくる

アーティスティックでオーセンティックなスイーツをつくる平瀬パティシエ。

食材に対する探求心や愛、食材の組み合わせ、

アートなまでの繊細で大胆な作品(スイーツを超えて、もはや作品!)

その裏に秘めた発想や想い、日頃考えていることなど、

平瀬パティシエを深掘りする「パティシエ SHOKO HIRASEの視点」です。

 

第2回は、「おいしい琥珀糖は、時間がつくる」

かき氷につづくマイブームありませんか?

と、お聞きすると、

 

  うーーーん。

  あっ、琥珀糖がいいかな。

  お世話になっているクリエーターさんの10周年イベントで、

  ゲストへのご招待状として琥珀糖つくったんですよ。

 

と、平瀬パティシエ。

 

ここで、先にお勉強。

皆さん、琥珀糖をご存知ですか?

寒天と、水、砂糖だけでつくる伝統的な和菓子です。

寒天と砂糖を煮詰めて溶かしてから、それを冷やして固める。そして乾燥。

そうすると、表面は結晶化された砂糖がシャリっと

中は寒天のようなプルンとした食感が、愛らしい和菓子です。

 

何より、ご招待状にスイーツって、発想が素敵ですよね。

 

  琥珀糖は、つくってから10-15日間くらい日持ちするお菓子なのですが、

  日が経つごとに、表面の結晶化が進んでいくんです。

 

今年の干支に因んで、うさぎの型にいれて、早速試作。

クリエーターさんの作品。この中のうさぎがモチーフ。(下段右端)

 

  どのくらいの硬さがいいかなと思って、

  1日目、3日目、10日目とお出しして、

  選んでいただくつもりでした。

  そうすると、ご依頼のクリエーターさんが、

  この時間の経過がおもしろいね。

  全部つかいたいということになりました。

 

クリエーターさんが10周年だから、

10年の軌跡を琥珀糖で表現。

なんとも、素敵なアイデアです。

 

  1日目から10日目まで、時間の経過が、味として見える。

  写真をみていただくと、だんだん表面がかたまってきて、

  それが食感に直結する。

  まさに、「時を食べる」

  表面が固まってくる様は、氷になるときと同じなんです。

  まわりからじわじわ固まってくるんです。


作り立て。1日目


3日目。少し表面が乾いてきました

 


途中経過。だんだん「糖化」してきました。

 

見た目でも、うっすらヴェールがかかっているように見えるところは

シャリっとしそうだし、透明なところは、プルンとしそう。

 


10日目。
完全に表面が固まっています。

 

こんな風に、変化するところを実際に見たことがないですよね。

まさにラボ!

 

  わたしは3日目が一番好きでした

 

と、平瀬パティシエ。

 

茶色の色は、なんのお砂糖ですか?

と、お聞きすると、

 

  いろいろな砂糖でつくってみましたが、

  今回は和三盆がしっくりきました。

  ちょっとだけ、黒豆のリキュールをいれてあります。

  砂糖の種類は、変えることはできるけど、砂糖の濃度は変えない方がおいしいですね。

変えるものと、変えないもの。

時間の経過は変わると、その食感や視覚的なものは変わっていくけれど、

濃度は変えない。これは糖化する変化のために変えないのだそう。

 

ここが、平瀬パティシエの視点。

プロの技。

 

こんなかわいいイベントのご招待状が来たら、

さぞ、イベントも素敵なんだろうなって、たくさんのゲストがいらしたのでしょう。

 

水と、寒天と砂糖。

究極にシンプルな素材だけのお菓子が、ある種の発酵にも似ている変化、

「糖化」をしていく。

それは何でもない「時間」がつくるもの。

 

その自然の素材と、時間を操る平瀬パティシエ。

時を食べるっていう発想もおもしろい。

 

次なる平瀬パティシエの視点はなんだろう?

楽しみ、楽しみ💗

 

to be continued…

次回もお楽しみに!

 

(文 小池美枝)